言語聴覚士の読書ノート

言語、脳、失語症を考える

失語症の解剖学再考

失語症の解剖学再考 Brain 2018年 https://scholar.google.co.jp/scholar?as_ylo=2017&q=aphasia&hl=ja&as_sdt=0,5#d=gs_qabs&u=%23p%3DtiEcF5MSyKgJ ほとんどの場合、失語症は左半球が関与する脳卒中によって引き起こされ、より広範な損傷は通常、より重度…

失読症のマーカーとしての復唱

音韻論的・形態論的処理を超えて:英語の読解力不良ではない中国語の失読症のマーカーとしての復唱 Annals of Dyslexia 2015年7月 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25876887/ 中国語の失読症と外国語としての英語の読解障害の認知的相関を調べるために、中…

出生時の音声知覚:脳は速い時間情報と遅い時間情報をコード化する

出生時の音声知覚:脳は速い時間情報と遅い時間情報をコード化するScience Advances 2020年7月22日 https://advances.sciencemag.org/content/6/30/eaba7830 音声知覚は聴覚処理によって制約されています。生まれたばかりの乳児は聴覚系が未熟で言語経験も限…

失語症における言語記憶と文章理解

失語症における言語記憶と文章理解:一症例シリーNeurocase. 2019年10月号 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31272279/ 本症例シリーズでは、失語症患者4名を対象に、言語記憶能力と文理解力の関係を探った。 2つの文理解課題では、P1とP2の2人の患者は構文…

ヘシュル回と音楽脳

Nature Neuroscience 2002年6月17日 音楽家の聴覚野の活性化を反映したヘシュル回の形態学的研究 https://www.nature.com/articles/nn871 脳磁図法(MEG)を用いて、非音楽家12名、プロ音楽家12名、アマチュア音楽家13名の聴覚野における正弦波音の処理を比…

言語、知覚、行動の脳内ネットワーク

Neuropsychologia2017年4月言語、知覚、行動の脳内結合。ヒト大脳皮質における時空間意味活性化の神経生物学的モデルhttps://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0028393216302421大脳皮質の異なる領域は、一般的な意味処理と選択的な意味処理、あ…

興奮性脳状態の促進:脳卒中における脳修復のメカニズム

こんにちは。 アプリをリリースしたので(http://aonekox.hatenadiary.jp/entry/2021/01/02/133436)、今年はブログも少しずつ更新していこうと思います。 とは言え、私はめんどくさがりなので、自分の勉強も兼ねた超手抜きの記事にします。 具体的には、海外…

言語訓練アプリをリリースしました!

こんにちは。ごぶさたしております。 ブログを書き散らかして(というほど書いてないですが)放置していましたが、その間に、失語症やお子さんの言語訓練のためのアプリを作っていました。 聴覚的理解 https://apps.apple.com/jp/app/%E8%A8%80%E8%AA%9E%E8%A8…

短時間でも継続的なリハビリが慢性失語症に効果

今日は発症後一年以上経過した失語症患者への言語リハビリの効果を、一回の時間と継続期間の視点から検討した論文をご紹介します。 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/29273692/?i=21&from=aphasia —————————— 目的 これまで、慢性期失語症のリハビリの…

携帯電話の文字入力困難が失語症状になりうる可能性

私がときどき読んでいるロシア人のブログに言語聴覚士として興味深い記事がありました。http://blog.livedoor.jp/choko_tanya/archives/2047483.htmlその方はロシアと日本で子育てをされてきたそうなのですが、日本の子供の方がロシアよりも文字を覚えるのが…

退院後の失語症者を考えた支援

昨日、日本失語症協議会主催の「失語症理解入門講座」に参加してきました。会費は資料代の実費のみの5百円で、開催側は手弁当で来てくださってたと思うのですが、内容はとても充実していました。実際的でわかりやすく無駄がないすばらしいものでした。言語聴…

言語機能における小脳の役割

今日は小脳の言語機能について書かれたレビュー論文をご紹介したいと思います。2017年のこちらの論文です。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/28987056/?i=19&from=aphasia------------------------------------------小脳は最近まで運動や視覚と運動の…

外国人アクセント症候群は実在するのか?

今日は日本神経心理学会に参加してきました。横浜市立大学の東山雄一先生らによる、外国人アクセント症候群に関する大変興味深い発表を聞いてきましたので、シェアしたいと思います。ちょっとマニアックですが。外国人アクセント症候群(foreign accent syndr…

失語症改善にはどの課題を重点化したらよいのか

今日は日本の論文をご紹介します。2014年に高次脳機能研究に掲載された東川・波多野によるものです。失語症の言語治療効果に関する因子分析研究https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/34/3/34_291/_pdfこの研究では、失語症が回復するメカニズムを調べ…

脳卒中を生きる意味ー病いと障害の社会学

今日は、こちらの本をご紹介したいと思います。『脳卒中を生きる意味ー病いと障害の社会学』https://www.amazon.co.jp/脳卒中を生きる意味―病いと障害の社会学-細田-満和子/dp/4902249227本書は脳卒中により障害を負った27人の方とそのご家族にインタビュー…

失語症リハビリの効果にエビデンス

リハビリの効果を客観的に示すのは難しかったのか、これまで言語聴覚士が行う失語症リハビリのエビデンス(科学的根拠)を示す論文は見かけませんでした。ところが、今年2017年3月にLancet誌に出ていたのです。「脳卒中後失語症患者さんへの医療保険でカバー可…

小鳥の歌からヒトの言葉へ

失語症のリハビリをしていると、その言葉の意味はわかっているのに、言われた通りに繰り返す復唱課題が困難な方に出会います。このような患者さんを見ていると、音が与えられていて、その通りに言うということにどれだけ複雑なプロセスが要求されるかという…

口の動きが語想起の手がかりに

失語症のリハビリでは、絵を見せてその絵に描かれた物の名前を言ってもらう課題をやってもらうことがよくあります。このような課題を「呼称」と言います。呼称課題でなかなか正解が言えないときに、言語聴覚士は、すぐに正解を教えるわけではなく、ヒントを…

言葉と脳と心 ー失語症とは何か

まずご紹介したいのは、こちらの本です。 言葉と脳と心 ー失語症とは何か山鳥重 著 講談社現代新書 https://www.amazon.co.jp/言葉と脳と心-失語症とは何か-講談社現代新書-山鳥-重/dp/4062880857/ref=sr_1_3?s=books&ie=UTF8&qid=1503754571&sr=1-3&keyword…

はじめに

言語聴覚士として失語症の方々のリハビリにかかわっていくと、一口に失語症と言っても、その症状は非常に多彩であることがわかります。 そのような多彩な症状を見ていると、根源的な疑問が湧いてきます。 私たちがたった一言のことばを発するとき、また理解…

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