言語聴覚士の読書ノート

言語、脳、失語症を考える

脳卒中を生きる意味ー病いと障害の社会学

今日は、こちらの本をご紹介したいと思います。


脳卒中を生きる意味ー病いと障害の社会学

https://www.amazon.co.jp/脳卒中を生きる意味―病いと障害の社会学-細田-満和子/dp/4902249227


本書は脳卒中により障害を負った27人の方とそのご家族にインタビューし、発症時点から病気のフェーズごとに生の声を載せています。


闘病記というと、家族の助けによって立ち直った美しい話を思い浮かべるかもしれませんが、この本はそういう話ばかりではありません。


脳卒中により妻に離婚されたり、離婚されなくても「死んでくれた方がよかった」と言われていたりと、きれいごとではない、リアルな脳卒中の現実が書かれています。


リハビリ提供側が問題とすることの中に、本書でも取り上げられている「障害受容」という言葉があります。患者さんがリハビリに取り組むためには障害受容が必要だと考えるわけです。


しかしこの本を読んで、障害を受容してないからこそリハビリをがんばれるという側面もあるのだと思いました。


多くの人は、何年もかかって、決してカッコよくなく、絶望と希望の間をもがきながら、折り合いをつけていくものなのです。


そしてその境地に到達した人は、成功し風を切って歩いた病前の自分よりも、強く優しく深い人間性を獲得できるのだと思いました。


人間の「しぶとさ」「しなやかさ」を感じることができた一冊でした。


脳卒中にかかわる以外の人にも読んでほしいです。