言語聴覚士の読書ノート

言語、脳、失語症を考える

外国人アクセント症候群は実在するのか?

今日は日本神経心理学会に参加してきました。

横浜市立大学の東山雄一先生らによる、外国人アクセント症候群に関する大変興味深い発表を聞いてきましたので、シェアしたいと思います。ちょっとマニアックですが。


外国人アクセント症候群(foreign accent syndrome: FAS)とは、脳卒中などにより、他者から外国語のようだと違和感を持たれるような話し方になってしまう症状を言います。

失語症が合併することもあればしないこともあります。


今日の発表の中で言われていたのは、FASの中でも、日本では、英語のようになる方と中国語のようになる方に分かれるそうです。

両者の症状をより詳しく調べてみると、英語のようになる場合は音の長さに変化があり、中国語のようになる方は、音の高さの位置が変わることによって、そのように聞こえることがわかりました。


一方FASのメカニズムとして、発語失行の代償なのではないかという説があります。確かに音の長さや高さの変化である点や、比較的若年者が多いことを考えると一理あります。


この発表では、そのような発語失行との独立性を病巣から検討しています。病巣と言っても単純な病巣ではなく、損傷を受けた領域に関係する神経の伝導露から関連する脳領域を推察するという手法を使っています。

その結果、中心前回中部が責任病巣と特定されました。中心前回下部の発語失行とは独立した症候群として考えることも可能であるということです。


FAS言語聴覚士でも10年に一度出会うか出会わないかという頻度なのだそう。私は一度、自分の担当ではありませんが会いました。英語型でした。FASだからと言って何か特別なセラピーがあるというわけではないので、診断はそれほど重要ではないのかも知れません。


しかし第二次大戦下で、ドイツ語なまりのようになってしまったノルウェー人が敵国人と見られて迫害を受けたという事例があるそうなので、一つの症候群として認識されていることは重要なのでしょう。