言語聴覚士の読書ノート

言語、脳、失語症を考える

退院後の失語症者を考えた支援

昨日、日本失語症協議会主催の「失語症理解入門講座」に参加してきました。


会費は資料代の実費のみの5百円で、開催側は手弁当で来てくださってたと思うのですが、内容はとても充実していました。実際的でわかりやすく無駄がないすばらしいものでした。


言語聴覚士向けではないのになぜこの講座に出たかというと、これまで病院で失語症者の言語訓練をしてきましたが、退院後のことはあまり知らないなと思ったからです。


実際講演を聞いてみて、病院で自分がやってきた言語リハは、機能訓練に偏りすぎだったかも知れないなと思えてきました。


この講演の中で例として挙げられていた、失語症者の困りごとで、こんな場面がありました。待ち合わせをする時に、失語症者の方は時間を2時だと言ったつもりだったのですが、実際には12時と言っていました。12時に来て長いこと待っていた相手がカンカンに怒ってしまった、という話です。


もしこのようなことが続けば、もともと家に引きこもりがちな失語症の方はさらに社会と接触する意欲をなくしてしまうでしょう。


こうしたことは文字で確認しあったり、スマートホンなどのツールを活用したりすることである程度防げると思うのですが、なかなかそういった場面を想定したリハビリはできていないです。


発症後まもない入院している時期は、回復力も高いので、機能訓練に集中したいという部分もあるのですが、そこからご自宅などに戻るためのクッションはもう少し入れた方がいいのかなと思いました。


今回いろいろ役に立ちそうな情報をいろいろもらったのですが、その中で特に目からウロコだったのは、失語症者の理解状況を確認するために、本人の答えと反対の質問をするというものがありました。


例えば、「ご飯を食べましたか?」とたずねて「はい」と答えたとき、本当にご飯を食べたか確認するために、「まだご飯を食べていませんか?」と聞いて「いいえ」と答えられるかかどうかを確認するのです。特に大事なことを確認したい時にはやってみようと思います。


失語症の方も来てくださって、コミュニケーションの練習もさせてくださり、とてもよく考えられていて、開かれたいいセミナーでした。