言語聴覚士の読書ノート

言語、脳、失語症を考える

言語機能における小脳の役割

今日は小脳の言語機能について書かれたレビュー論文をご紹介したいと思います。


2017年のこちらの論文です。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/28987056/?i=19&from=aphasia

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小脳は最近まで運動や視覚と運動の調整、バランス感覚などと結びつけられてきたが、認知機能とも深い関わりがあることが明らかになってきた。

小脳は言語機能とも関わりがあるようだ。例えば野菜の名前をできるだけたくさんあげるとか、「か」がつく言葉をあげるような語流暢性という機能や、文法の表出や理解をする機能、言語的誤りを特定・修正する機能、文字を書く機能を小脳が担っているということが最近の研究で示されている。

小脳と大脳皮質の連絡や小脳の構造的異常が発達性読み書き障害の理論でも強調されている。

脳解剖学的に見ると、右小脳は大脳皮質の言語野と複数の連絡があり、言語機能に重要な役割をしていることがわかってきた。小脳の損傷によって引き起こされる言語障害は、たいてい無症候性のもので、高い言語機能を評価する神経心理学的検査方法を用いる必要がある。

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私も、小脳と失語症をあまり結びつけて考えてきませんでした。しかしこれまで小脳損傷で言語機能の低下が見られた方を担当したことがありました。構音障害も合併していたこともあり、正直その時最初は失語症を見逃していました。


しかしブローカ野やウェルニッケ野などのメジャーな言語野が言語機能に重要な役割をしていることは間違いありませんが、言語というものは非常に多くの領域がかかわっているのだということがわかります。先入観を持たずに、丹念に患者さんの言語機能を見ていく必要があると感じました。